さらに2世を苦しめたのが、終戦後の反日感情が渦巻く日々であった。日本はフィリピンを占領し、戦争に巻き込んだ国と敵視され、2世は差別や迫害の対象となった。日本人であることを隠すため、出生証明書や両親の婚姻証明書など日本人である証を自ら破棄することで、生き延びることを選んだ。まさに苦渋の決断であった。こうした結果、無国籍を余儀なくされたのである。
69歳の木村ロヘリオ(日本名・マサオ)さんは「国籍がないために、海外で働くことができなかった」と、悲痛な思いを口にした。「戦争が終わったことを知らずに1年くらいジャングルに隠れていた」と、辛かった子供時代を振り返るのは、79歳のカトウ・イニア(日本名・信子)さんだ。
父親の身元が分からなかったり、名前と出身地がわかっていても証明できなかったりした2世は、約900人いたといわれている。
父の故郷に思いをはせ、自らのアイデンティティーを確立したいと願うフィリピン残留日本人2世の思いに応えようと、フィリピン日系人リーガルサポートセンター(PNLSC)と日本財団は2006年から、国籍回復事業を共同で行っている。これまでに父親の身元が判明したのは620人、うち95人の国籍回復が実現した。