物語は、ある村に住む少女、ルーシーとおじいさん、そして子馬の3人(?)のキャラクターを中心に進む。ある日、おじいさんを乗せて子馬が走っていたところ、おじいさんは落馬して死んでしまう。ルーシーを悲しませまいと思った子馬は、とんでもない行動に出る。なんと、おじいさんの皮をはいで、自分がその中に入ってしまうのだ。
奇想天外なストーリーの秘密は、この物語が誕生したきっかけに隠されている。「実は、夢をもとにしているんです。ずいぶん前に今回の作品とほぼ同じ夢を見て、その内容を当時の妻に話したら、『いい話だね』ってワンワン泣き出して。長い間忘れていたけれど、『あれを絵本にしたら面白いんじゃないか』と思いつきました」。夢ならではの奔放な描写。「漫画だとシュールすぎるかもしれないけれど、絵本なら成立する」
「皮をはぐ」という行為も一見残酷に思えるかもしれないが、あえて取り入れた。「『かちかち山』とかもそうだけれど、結構絵本って残酷で、そこが面白かったりする。それに、自分は、これまでの戯曲や小説でも『残酷さの先にある自由』を追求してきたつもり。今回もそれを取り入れました。あとは、『皮をむく、むかれる』ということで『事実と真実』の対比みたいな見方もできるかもしれませんね」