【湘南の風 古都の波】
≪夕闇に余熱の秋の祝い舞≫
10月ももう半ばになろうというのに、いったい、どうしたことなのか。あまりの気候の変調ぶりに戸惑う人も少なくなかったはずだ。
東京都心の大手町では10月11日、最高気温が30.2度まで上がった。1875年の統計開始以来、最も遅い真夏日だったという。
鎌倉市二階堂の鎌倉宮境内ではその11日と12日、秋の風物詩ともいえる鎌倉薪能(たきぎのう)が開かれた。
昼の暑さと日差しの強さは、東京でも鎌倉でも、あまり大きくは変わらない。
だが、うっそうとした古木に囲まれた境内には、日が沈むと、にわかに冷気が降りてくる。
例年なら境内に特設された客席は、観能の時間の経過とともに、下半身からしんしんと冷え込んでいく。ベテランの観客は手回しよく厚手の上衣を用意し、膝掛け用の毛布も持参してやってくるほどだ。
ただし、今年は季節外れの暑さのせいで、そうした用意も無用となり、寒さを気にせず舞台を楽しむ条件が整った。こういうこともあるんですね。