以前、創薬といえば何らかの化合物が偶然発見され、その形を少しずつ変えて実験を繰り返し行っていました。その無数ともいえる化合物の中から、何らかの薬効を持つものを探していくという雲をつかむような作業の繰り返しでした。この作業を繰り返すためには、できるかどうかわからない新規化合物をなんとか合成し、それを使って時間かけて実験していくことが必要です。そもそも目的の化合物がうまく合成できないかもしれないし、合成して実験してみたら薬効がないかもしれません。いずれにしても時間と労力、コストの全てが無駄になります。
コンピューターのシミュレーションは速度もコストも効率的。諸熊教授は、この理論の実現化に大きく貢献されたそうです。たとえばインフルエンザウイルスが増殖するために必要な酵素を邪魔する薬が必要なら、その酵素にはまり込んで邪魔をする化合物を、コンピューター上で探し続ければよく、タミフルの形もそうやって見つかりました。がん増殖のメカニズムからの抗がん剤開発など、同様の方法による創薬はどんどん進んでいます。ヒッグス博士は、南部陽一郎博士の研究に支えられたと語っていました。日本人が、さまざまな分野で世界の人々に貢献している姿は頼もしい限りです。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)