ぎりぎりのところで、私は最愛のトランクを守ってやることができた。つい一週間ほど前の話だ。今ではトランクは我が家の階段脇に、まるで何事もなかったように収まっている。私にはそれが、禁断の行為のことは見逃してやろう、と言っているように見えてしょうがない。(劇作家、演出家、小説家 本谷有希子/SANKEI EXPRESS)
■もとや・ゆきこ 劇作家、演出家、小説家。1979年、石川県出身。2000年、「劇団、本谷有希子」を旗揚げし、主宰として作・演出を手がける。07年、「遭難、」で鶴屋南北戯曲賞を受賞。小説家としても11年、「ぬるい毒」で野間文芸新人賞受賞。短編集「嵐のピクニック」で大江健三郎賞を受賞。新刊「自分を好きになる方法」(講談社)が発売中。