それとも木地師として漆器づくりの流れを知っておきたいと学習した結果なのだろうか。しかし現代においては、事情はもう少し複雑だ。
日常生活の中に木があふれていた時代は、山中でも多くの木地師が活躍していた。しかし「早く作って、安く売る」の製品づくりが主流の現在、その数は10人前後に減った。市場にはメイドインジャパンと言い難いモノが多く出まわっている。「挑戦し続けることが大切だ」と佐竹さんは言う。木地師として何を残していくのか、切り開いていくのかを考えると、生き残るためにはチャレンジし続けるしかない。歩みを止めない人がいなければ、技術も伝統もそこで終わってしまう。伝統を背負いつつ前へ進む、それが現代の職人の姿なのだと感じた。
山中のとある神社に足を運んだ。平安時代、近江に隠棲していた惟喬(これたか)親王が木工技術を人々に伝授し、その技術が山中に伝わり木地師の村落を形成、そこから木地師は全国に広がったと伝えられている。山中はいわば木地師のルーツの場所だ。木地師は山の民として、山々を漂流しながら、豊かな自然があるところに根付いて、自然の恵みを受け取り、ものを作ってきた。