ミステリーでも純文学でもあるし、そのどちらでもない。既存のカテゴリーにはまらない作品だが、それは自身のあり方にも通じる。「人間の面白さって、『枠を超える』ことにあると思うんです。この作品もそうですが、僕は大多数の人が普通にうなずけるものは書いていない。読み終わって『こういう世界もあるんだな』と思ってもらえればいい。自分では気づかなかったものに気づくことが、小説の醍醐味だと思っていますから。小説は『共感』だけが必須ではない。共感のその先にあるものを書いていきたいですね」(文:塩塚夢/撮影:瀧誠四郎/SANKEI EXPRESS)
■なかむら・ふみのり 1977年、愛知県生まれ。福島大学卒。2002年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。04年『遮光』で野間文芸新人賞、05年『土の中の子供』で芥川賞、10年『掏摸〈すり〉』で大江健三郎賞を受賞。『掏摸〈すり〉』は世界各国で翻訳され、ウォールストリート・ジャーナル2012年ベスト10小説に選ばれるなど、高い評価を受けた。