車いすの物理学者として著名なスティーブン・ホーキング博士が音声合成装置を使って講演する姿をテレビ番組で見たことがある人も多いだろう。
全身の筋肉の萎縮が徐々に進行していく「筋萎縮性側索硬化症」である博士は、頬の筋肉の微妙な動きをセンサーに感知させて、パソコンに文字入力し、それをさらに音声に変換して意思を伝達している。しかし、病状の悪化で、博士はこの方法での意思疎通も難しくなりつつあるそうだ。そこで、博士は半導体メーカーのインテルなどの協力で新たな意思伝達手段を探しているという。
つくば市にある独立行政法人・産業技術総合研究所の長谷川良平・研究グループ長らが開発した「ニューロコミュニケーター」も有力候補の一つではないか。
これはパソコン画面上に表示された絵カードの問いかけに対する脳波の変化をリアルタイムで解読し、音声合成装置とアバター(CGキャラクター)によって意思伝達を行う装置で、体の筋肉を使わなくてもコミュニケーションが可能になる。長谷川氏によれば、来年4月には臨床研究モデルを筋萎縮性側索硬化症などの重度運動機能障害者に提供していくという。