【KEY BOOK】「万葉の歌人たち」(岡野弘彦著/NHKライブラリー、1019円、在庫なし)
師の折口信夫の万葉集観を踏襲するように、先生は何百回となく万葉を歩き、万葉を語り、万葉をときほぐしてきた。本書はなかでも最もよく読まれてきた一冊。先生は人麻呂の「近江荒都歌」をもって万葉の原点とみなし、その解説をつねに荘重に述べてきた。壬申の乱のあとに荒れた都を人麻呂が偲んだものだ。ぼくもかつてその岡野解説に寄せて井上鑑の音と田中泯の踊りとコラボしたことがある。やっていて泣けてきた。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS)
■まつおか・せいごう 編集工学研究所所長・イシス編集学校校長。80年代、編集工学を提唱。以降、情報文化と情報技術をつなぐ研究開発プロジェクトをリードする一方、日本文化研究の第一人者として私塾を多数開催。おもな著書に『松岡正剛千夜千冊(全7巻)』ほか多数。「松岡正剛千夜千冊」(http://1000ya.isis.ne.jp/)