なぜ生産調整廃止が農業再生に結びつかず、ねじ曲がってしまうのか。その理解には民主党政権時の戸別所得補償制度に立ち戻る必要がある。この制度は欧州もやっているもので、生産意欲のある大規模農家の生産費を補填(ほてん)するのが目的だ。ところが、民主党政権は減反に応じた農家を対象に適用したため、逆に生産調整強化と高齢・小規模農家温存に作用してしまった。
今回の安倍政権がやろうとしているのは、この戸別所得補償制度をやめて、その1600億円の財源を麦や飼料用米などの転作補助金に回そうというだけである。ただ、戸別所得保障制度を全廃するだけだと農家の不満が高まるので、減額した上で農地保全名目の新たな「日本型直接支払い」に切り替えるという。
生産調整制度を廃止しても農業を元気にする最適なストーリーは描けず、補助金制度だけが複雑になる。農家の多数を占める兼業農家の票を前に、理念のない「つかみ金農政」は堅牢(けんろう)だ。“岩盤”に挑んだアベノミクスの敗北が早くも濃厚である。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)