美しさと歴史、パリでも評価
2012年から2年連続で、私は柴田慶信商店の柴田慶信さんと息子の昌正さんと一緒に、曲げわっぱの「巡業」のためパリを訪れました。海外へと展開していく中で、生のユーザーの声を知りたいという思いからです。巡業では、展示だけでなく、実際に曲げわっぱを使った食事会を開くなどして、現地の人々の反応を調査してきました。最もパリの人々を惹きつけたのは、曲げわっぱの持つ「美しさ」、そして何百年もの間使い続けられているという「歴史」であり曲げわっぱそのものの魅力を再認識することができた旅でした。
この「巡業」で学んだのはそれだけではありません。柴田さんは70代、昌正さんは30代。2つの世代の父と息子が一つ屋根の下で暮らし、仕事をし、共に旅をする。違う世代同士が1つのものを作り出すために、真正面から向き合っているのです。1人の人間の美意識にとどまるのではなく、別々の世代がそれぞれによいと思えるものを作っている。そのことが、伝統を受け継ぐ上で大切なことであり、いくつもの時代にわたって愛されるものを生み出すことができる要因なのではないでしょうか。(談話:「丸若屋」代表 丸若裕俊/SANKEI EXPRESS)