バンド「黒木渚」のギターボーカル、黒木渚さん=2013年7月22日(鋤田正義さん撮影)【拡大】
撮影の数日前、打ち合わせで衣装の話が出た。「渚さんの好きなものを」と鋤田さんは穏やかに言った。その夜、眠りに就くまでずっと考えていた。「音楽家、黒木渚が身にまとっているものはなんだろう?」。翌日の朝、目覚めた時にその問いの答えは出ていた。
「言葉だ」
それは、私が一番執着してきたものであり、私の本質を表すもの、そしていつだって私の肌に宿っているものだ。そうと決まれば早速言葉を選ばなくては。自分の作品の中から、特に身につけたいものを選ぶ。まるでとっておきのドレスを選ぶように。
「少年の目」がレンズに変わる
そして撮影当日、私は上半身に言葉をまとってスタジオに入った。両手にも、肩にも胸にも歌詞が書かれている。背骨の上には、自作の『骨』という楽曲にちなんで『私を通る強い直線』という歌詞を入れてもらった。鋤田さんはそんな私の姿を見ると、「どうぞよろしく」とほほ笑んだ。ああ、少年の目だ。
話すたびに感じていたことだが、鋤田さんの目は少年のままなのだ。カメラが好きだという純粋な気持ち、撮るという行為に今でもワクワクし続けている人なんだとすぐに気付いた。