バンド「黒木渚」のギターボーカル、黒木渚さん=2013年7月22日(鋤田正義さん撮影)【拡大】
そして撮影が始まると、彼はカメラになってしまう。少年の目は、レンズと重なってひとつになり、鋤田正義という人間を超えて、もはやカメラそのものになってしまった。そこに人が居るということを全く感じないほどだ。気配が消え、スタジオは私だけの空間になる。だから自分と向き合うしかないのだ。どんどん感情が沸き上がり、いつの間にか本気で歌っていた。撮られていることも忘れて、言葉まみれの私は全てを吐き出した。
撮影が終わり、たかぶってまだ息も整わない私はカメラの前で放心していた。すると、カメラの向こうで小さくつぶやく声が聞こえた。
「僕、感動しちゃった」
それはカメラを愛する少年の声であり、巨匠と呼ばれる写真家から私へ贈られた最高の言葉だった。(文:バンド「黒木渚」のギターボーカル 黒木渚/撮影:写真家 鋤田正義/SANKEI EXPRESS)