「あの恐怖や惨状の現場から『まんまと』逃げ出してきたという後ろめたさでした。でも、そのうち自分にできることをやるしかないと思うようになって…。そこでふと思いついたのが、『昔話』でした。昔話なら、小さい子からお年寄りまでみんなで読むことができます。しかも、あまり頭を使わずに、ラクーに読める。避難所や仮設住宅で暮らしている被災した方々が、一時でも目の前のつらい現実を忘れることができればと」
こうして現代によみがえった“昔話”。巧みな人物造形が、読み手をハッとさせる。例えば「さるとかに」のサルは、流れ者という設定。イケメンではあるが、どこか酷薄さを漂わせる。「今でもいるタイプの男だよなあ…と書きながら自分でも思いました(笑)。『いるいるこういう人!』と身の回りの人間を想像しながら読んでいただければ」