よく晴れた冬の週末。江戸城本丸跡。広い、広い空。かつて一角に松の廊下があった。元禄年間。赤穂藩主、浅野内匠頭(たくみのかみ)が吉良上野介(こうずけのすけ)に斬り付けた現場だ。「忠臣蔵」の発端である。
浅野は拘束され、身柄を新橋の田村邸に移される。田村家は一関藩(岩手県)藩主だった。新橋の和菓子屋、新正堂の渡辺仁久(よしひさ)社長(61)と会った。
「田村邸は広大で、約2000坪あったそうです。庭にお化けイチョウと呼ばれた巨木がありました。浅野内匠頭は、イチョウの木のそばで切腹したと伝えられています」
新正堂は旧田村邸敷地内にあった。道路工事のため、近くに移転したが、いまも忠臣蔵ゆかりの「切腹最中」を販売している。また、渡辺社長は赤穂観光大使を務める。
「お化けイチョウは関東大震災で焼けてしまいました。田村邸をしのぶものは残っていませんが、事件のことは語り継いでいきます」
次に墨田区両国(旧本所松坂町)を訪れた。ここに吉良邸があった。敷地約2500坪。吉良邸跡の一部は、壁に囲まれ、保存されている。往時をしのぶことができる。