一方で出生前診断を受けてダウン症の子供が生まれる確率が高いと分かっていても、産む決断をする親もいる。ダウン症の子供を育てる社会環境整備が不十分という指摘もあるが、それも健常者と障害者が共に生きる社会をどう実現するかという制度設計の問題であって、中絶する理由にはならない。
そもそも日本では胎児の障害を理由にした中絶は法律上認められていないはずである。しかし、現実には倫理面や法律についての十分な国民的論議が行われないまま、なし崩し的に中絶が行われている。
医療技術の進歩は著しい。今後、遺伝子検査がますます安価に簡単に行うことができるようになるだろう。親は赤ちゃんの命に対する決定権をどこまで持つことが許されるのか。出生前診断が広がる前に、その根本的な議論こそが急務だ。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS)