日本の外務省やメディアのなかには、こうした冷静な見方にくみせず、「中国があと一息で外相会談や首脳会談をセットしようとしていたのに、首相が壊した」(外務省筋)と不満を漏らす向きも散見される。これも見当違いだ。
首相は第1次安倍政権で参拝しなかったことを「痛恨の極み」と繰り返してきた。再び首相となった上は、在任中に必ず靖国に参拝することを示唆してきたのだ。
「あと一息」のトップ会談が今春か夏かは不明だが、仮に会談後に首相が参拝していたら、中国側は「安倍首相は裏切った」と憤激して、関係は今よりもこじれるだろう。野田佳彦政権は、2012年にウラジオストクで胡錦濤前国家主席と立ち話をした翌日に尖閣の国有化方針を発表し、胡氏は大いにメンツを失い、関係悪化に拍車をかけた例もある。
日中双方が、「今が底」と認識できる状況に達した方が、その後、戦略的互恵関係の構築に踏み出しやすいはずだ。(佐々木美恵/SANKEI EXPRESS)