バンド「黒木渚」のギターボーカル、黒木渚(右、鋤田正義さん撮影、提供写真)【拡大】
そして今回は鋤田さんがライブハウスにやって来る! そもそも、鋤田さんが行動派の写真家であることは私も知っていた。過去の作品を見ると、街中の看板、回転ずし屋、ペットボトル、地下鉄、楽屋など、外の世界を歩き回らなければ撮れないものがたくさん映っている。何より初めて鋤田さんに会ったときに抱いた「この人はカメラ好きの少年のままだ」という強烈な印象から、行動派だというのを予感していたというのもある。レンズの向こうに世界を見る少年は、その純粋な好奇心からどこまでも被写体を追いかけていくのだろう。
全てを映すサイレント
私にとってステージは特別な場所だ。歌詞には物語が凝縮されていて、そのひとつひとつを再現していく。音楽家なので、歌詞とメロディーとリズムで表現することの比重が大きいのは当たり前なのかもしれないが、照明・表情・動作、それから息を吸う音さえも大切な要素だ。物語の主人公に憑依(ひょうい)した私はそれらの要素を組み合わせ、物語を具現化する作業をしているのだと思う。不思議なのは、私は何者にでもなるくせに、変化する私こそが紛れもない黒木渚だと毎回思い知らされる点だ。だからライブは面白い。そして鋤田さんがカメラに向ける情熱と同じくらい無心になれるものが私にあるとすれば、それはライブだ。