バンド「黒木渚」のギターボーカル、黒木渚(右、鋤田正義さん撮影、提供写真)【拡大】
ライトが射(さ)し、演奏が始まればもう最後まで走り抜くしかない。本番直前まで「鋤田さんが来ている」ということを意識していたのに、それも忘れて夢中で歌い、ステージの上を動き回った。全てが終わってしまった後で、「せっかく撮影に来てくれたのに、あんなに激しく動き回って大丈夫なものだろうか?」と心配になった。けれど、後日鋤田さんから送られてきた写真に私は息をのんだ。
ライブのほんの一瞬を切り取った一枚の写真。そこに本当の私が映っていた。振り乱れた髪で顔は隠れているし、鮮やかにステージを照らす照明は白と黒のコントラストのみになっている。そして何より写真は音がない。それなのに、表情も色彩も音も全てがそこに映っていると思った。
してやられたり。愉快な悔しさがあった。ライブハウスという私の本拠地にいながら、鋤田さんの刀でバッサリと斬られたような感じだ。そして、その切り口の見事さに私が痛快感を得るという謎の現象。