ということはけっこうむずかしいことだと思うのだけれども、それを可能にしているのは作者の目のよさで、それはすなわち超高性能のレーダーのようなものなのだろうが、これまでの文学と違って、それを背負っていることを苦しみとして描かず、特別なものと捕らえない態度を貫いているところも、この激烈なおもしろさに繋がっているように読み狂人は思う。
根底に強い倫理観
また、筋はとりとめがなく、人の行動もいきあたりばったりで、意味だけを追っていけば理解できない部分もあるのにもかかわらず、実に腑に落ちてすっきりするのは、勿論、作者が工夫を凝らしているからだが、その根底には作者の強い倫理観があるのではないかと思う。ただしそれはなにに基づく、どのような方向性のある倫理観なのかは、判然としない。ただ、これはあかんやろう、という強い気持ちが、「キリストの出てくる寓話集」などに現れている。この場合、それが正しいか間違っているかは問題ではなく、ふざけたような、なにもかもを相対化したような状態の奥底に太い黒々としたものがあるかないかということで、それを感じて読み狂人は感心も得心もしたのである。