2013年10月に死去した、漫画家で詩人のやなせたかしさん。ラストメッセージとして、平和への願いを訴えた=2012年6月30日、東京都新宿区(北野浩之撮影)【拡大】
【本の話をしよう】
昨年(2013年)10月に94歳で死去した漫画家で詩人のやなせたかしさんが、軍隊の体験について初めて本格的に語った本『ぼくは戦争は大きらい-やなせたかしの平和への思い』が刊行された。「アンパンマン」などの名作を通じて愛と勇気のメッセージを発信し続けたやなせさんが、平和への思いを最後に残したロングインタビューになっている。
インタビューは昨年(2013年)4~6月、事務所で行われた。「(戦争を)思い出すのも、話すのも嫌」としていたやなせさんは積極的に軍隊経験について語らなかった。戦争体験だけをまとめて話すのはこれが初めてという本書では、「日本が戦争をしたという記憶が、だんだん忘れ去られようとしています」と“解禁”した理由を明かし、戦争のむごさ、愚かさを説き起こしている。
しなくてすむ世の中に
日本が太平洋戦争に突入した1941年12月8日、やなせさんは福岡県にあった陸軍の部隊にいた。馬部隊、暗号班などを経験し、終戦までの間に中国・福建省の福州などを転戦した過去を振り返った。
人を殺さなければならないことも、団体での生活も嫌だったというやなせさんにとって、軍隊生活はばかばかしいだけに映った。しかし、つらい中にも何か楽しみを見いだしていく持ち前の性格で、戦争と軍隊を内部から風刺していく。