何年かたち日本に戻った私は、いつの間にかそのことを忘れてしまった。しかし、周りの大人たちから「あなたは未来を担う世代なのだから…」という言葉をかけられるようになった時、子供の時に抱いた疑問を思い出したのだ。世界には、未来どころか今日一日を生きることさえ危ぶまれる子供たちがいるという現実。「そんな子供たちのために何かしたい」
それから10年、私はその思いを胸に、マラウイの子供たちの成長を願って、現場での仕事に奮闘している。
私が担当する母子保健の事業では、母親が安全な出産をするための医療インフラ整備、医療施設利用への啓蒙活動、産前産後の正しい知識の普及などを実施している。事業地のンチシ県では、医療施設で適切な処置を受けなかったために、妊産婦や乳幼児の死亡率・罹患(りかん)率が高くなっている。
≪生まれてくる命と母親のために≫
たとえば、一番近い医療施設に行くだけでおよそ20キロ、その施設に産科棟がなければさらに遠い病院まで行かなければならない。道は舗装されておらず、自家用車はほとんどないため、移動手段は徒歩だ。