優しくも、力強さを秘めた吉岡の声が印象的だ。吉岡は「アフレコで難しいのは、丁寧に感情を込めようとする自分の思いとは裏腹に、映像がどんどん進んでしまうこと。自分が演じた方が早いのですが、そこを何とか声と映像が重なり合うようにと、監督やプロデューサーがしっかりと指導してくれましたし、(母親役の)吉永小百合さんが一緒にいてくれました。何よりも皆さんの心遣いに救われました」と謝意を示し、ほっとした表情をみせた。
救われた気がしました
人生の不安や悩みに吉岡はどう向き合ってきたのだろう。「人間が『何で私は生まれてきたのか』『何で私は生きていくのか』と考えたり、死を恐れたりするのは当たり前のことだと思います。悩んでいるのは僕だけじゃないんだと、手塚先生のブッダを読んだときに僕は救われた気がしましたね」。やはり手塚の「ブッダ」から受けた影響が大きいようだ。
実は、自身が諏訪満男役で出演した「男はつらいよ」シリーズ(1981~95年)にも、悩める人間たちの答えになるのではないかと考える描写があるそうだ。「満男が寅さん(渥美清)に『人は何で生きていくの?』と質問すると、寅さんはいいます。『生きてきてよかったなと思うときがある。そのときのために人は生きているんじゃないのか』。僕もそんな気がするんです」