昨年あたりから、アベノミクスによる円安効果で大手メーカーからの仕事が増えてきた。まだリーマン前の水準に戻っていないが、「少しでも社員に還元し、上向いてきた景気に貢献したかった」(諏訪社長)。ダイヤ精機では、仕事の数が今のペースで半年続いた段階で中堅以上の社員も賃上げする方針だ。
賃上げに前向きな会社はほかにもある。佐賀県の中堅工務店の社長は「従業員の士気を高めるため実現したい」と話す。ある情報通信業幹部も「人材確保のため賃上げを前向きに検討したい」と語る。
トヨタ自動車や日立製作所など日本を代表する大手企業は業績が回復し、今期は過去最高益となる見通しで今春闘は賃上げムードが高まっているとはいえ、多くの中小企業の経営はまだまだ厳しい。
無理してでも…
大田工業連合会の舟久保利明会長は「最新設備のない10人以下の町工場は会社を維持するのに精いっぱい。政府には設備投資減税よりも、小さな会社にも仕事が行き渡る仕組みをぜひ考えてほしい」と訴える。お好み焼きチェーンを展開する千房(大阪市浪速区)も、アベノミクス効果で売り上げは回復してきたが、中井政嗣社長は「従業員の給与を上げてやりたいが、ベアは難しい。もう少し回復していかないと難しい」と、賃上げに慎重な姿勢を示す。