シンのほか、実際に政治犯の殺害や拷問に及んだ収容所の元管理者たちも登場し、本作はかつて「地上の楽園」と喧伝(けんでん)された北朝鮮の正体を内部からつまびらかにしていく。
作中でシンは、収容所からの脱出を計画していた母と兄の情報を看守たちに密告した結果、2人が公開処刑されたことを明かした。自分の肉親や兄弟に対し、なぜそんな仕打ちができるのか? シンは収容所内での親子関係の希薄さを真っ先に挙げ、「子供たちは幼い頃から親兄弟と暮らさないから、愛情が育まれません。自分の(血縁上の)『父親』というだけの存在でしかないのです」と答えた。独裁者への絶対服従を強要され、従わなければ容赦なく殺される。「長年、そんな教育を強いられれば、正常な判断力は働かなくなり、母と兄を密告するのが当たり前と思うようになってしまうのです」。シンは2人の公開処刑に立ち会っても特別な感情は抱かなかったそうだ。