そこで、がん治療にマイクロRNAが使えるのではないかと研究が進められてきました。がんの転移を抑制したり、抗がん剤の効果を高めたりするマイクロRNAが探索されてきました。三浦典正准教授(鳥取大学医学部病態解析医学講座薬物治療学分野)は、がん細胞に無限の分裂する能力を生み出すテロメレースに影響を与えるRNAと挙動を共にするマイクロRNAを10個見つけました。
その中のひとつ、miR-520dと呼ばれるマイクロRNAを悪性度の高い未分化がんに導入すると、テロメラーゼを抑えてがん細胞が悪性度を失い、正常細胞にもどることを発見しました。
iPSなどの多能性幹細胞は、細胞をいったん先祖返りさせて無限の命を授け、そこから必要な細胞を作り出す技術です。マイクロRNAのがん治療は、本来細胞が持つ寿命を「再教育」する技術です。医療の世界が、細胞の寿命をコントロールして利用するという新時代に突入したことを意味しています。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)