今回、川面美術研究所所長で娘の荒木かおりさん(56)は、長さ約60センチの支輪板115枚に描かれ、浄土に咲くとされる草花の「宝相華文」と「蓮華文」の復元を担当した。「時代性を大事にするように」との父の言葉を胸に、鳳凰堂を何度も訪問。板に特殊な方法で光を当てるなどして文様や彩色を研究した結果、カイガラムシから抽出したえんじ色の有機顔料が使われていたことを突き止めた。
えんじ色は紫外線を浴びると色が消える。復元に当たっては、えんじ色に濃い朱色を2割ほど忍ばせた。半世紀後、えんじ色が再び消えても、濃い朱色が浮かび上がる。次の修復者に、職人としてのこだわりを直接伝えたいとの思いからだ。
関西の寺を巡り、草花がどのように描かれていたかを調査。鳳凰堂と同時代の建立で、保存状態の良かった浄瑠璃寺(京都府木津川市)で、幅が太く描かれているのを見つけた。父は草花の縁取りを繊細に描いていたが、骨太な線幅を採用した。
「復元は亡き父と対話しているようでした」。仕事を終えた荒木さんは、ほっとした表情を浮かべた。(SANKEI EXPRESS)
■平等院鳳凰堂 平安時代の1053年、関白藤原頼通が極楽浄土をイメージして建立した。国宝に指定され、10円硬貨に描かれている。中堂と両翼廊、尾廊で構成され、全体の大きさは屋根の鳳凰像を除き、高さ約13.5メートル、幅約47メートル、奥行き約35メートル。
内部拝観は1回20分、50人ずつの入れ替え制で、受け付け開始は午前9時10分から。拝観料とは別に300円が必要。