こうした証言を裏付けるのが映画「マドモアゼルC」だ。2011年、10年かぶり続けたヴォーグ編集長という王冠を脱いだカリーヌが、自身のイニシャルを冠した新雑誌「CR ファッション ブック」創刊に向け、高いヒール靴で駆け回る姿をおさめたドキュメンタリーだ。
究極のファッション誌作りへ
1954年、仏パリ生まれ。ロシア人の映画プロデューサーを父に持つ。18歳でモデルになるが、20代以降、「エル」を振り出しにファッション誌の編集者に。写真家マリオ・ティスティーノとともに手掛けた官能的で美しいファッションページは「ポルノ・シック」と形容され、強い印象を残した。
映画が伝えるのは、彼女の卓越したセンスとハードな仕事ぶりだけではない。最も印象を残すのは、常に夢を追う情熱的な横顔だ。映画の序盤、「(ファッションを)巨大な産業としてではなく、夢として扱いたい」と目を輝かせる。ファッションが持つ創造性やパワーを心から信じるから、より独創的で、ファンタジーに満ちた究極のファッション誌を作りたいと、新たな一歩を踏み出したのだ。“妨害”に見舞われ、かつての仕事仲間が去っても、「邪魔されチャンスが広がった。新しい写真家やモデルを発掘できた」と動じない。凛々しくたくましい生き方に魅了される。