一言ではその方向性を言い表せない独特な世界観が表現された作品だが、歌もの、インストゥルメンタルを問わず徹底的にたたきまくるリチャードのプレーが主役になっている。通常、ステージでの配置は常にボーカリストの背後になるドラマーでも、本人名義のアルバムでは、ボーカリストと並列、あるいは中央に位置しているあたりが斬新である。
それでも、決してうるさいという印象はなく、全編通して貫かれる幻想的かつ映像的なアレンジで、この作品は極上のリスニングアルバムに仕上がっている。最先端、最高峰である技術と発想を持ちながら、実は寡黙なリチャードの性格も反映されているのかもしれない。いずれにしても、そのアンビバレントがニューアルバム「ホール・アザー」の魅力なのである。過激と静寂。その両者が共存する音楽を堪能していただきたい。(クリエイティブ・ディレクター/DJ 沖野修也/SANKEI EXPRESS)