九州出身の音楽アーティスト、黒木渚さん=2014年6月1日、東京都渋谷区(鋤田正義さん撮影)【拡大】
私は自分のライブを客席から見ることはできないが、歌とばっちりハマった照明を浴びている時、客席からの自分が見える気がする瞬間がある。それはサッカーのシュートが決まったようなガッツポーズに値する瞬間であり、私を鼓舞する無音の声援なのだ。
相互に高め合う音と色
渋谷公会堂ファイナルのステージで特に印象に残った場面がある。それはエスパーという曲を歌っている時のこと。「深海へ、深海へ、深海へ」という歌詞があるのだが、これまではどの照明担当者もこの部分で青いライトを照らしてくれていた。深海のイメージから「青」を選ぶのは当然な気がするし、私自身も青い照明の中で歌うことに違和感はなかった。けれど、当日この部分で照らされたのはさまざまな色が織り混ざった複雑な光だったのだ。緑が濃い部分、青が濃い部分、暖色が見え隠れする部分、それらが重なって深く陰になった部分。
私は本当の海の底で歌った。はるか上の水面から、わずかな光が海の底へ届くのを感じて鳥肌が立った。「海=青」という単純なイメージではなく、深海の青を見事に表現していたと思う。目に見えるものや、常識だと思っていたものがすべてではないのだとステージの上で知らされたのだ。