異国の地には、日本とは全く異なる文化や慣習が存在する。
「清水さん、心の中で思っていることは口に出してくださいね。違うならはっきりと、『NO』と意思表示しなければいけません。何も言わなければ、『YES』と判断されることもありますよ」
ニュージーランド野球連盟のゼネラルマネジャー(GM)補佐と代表統括コーチに就任することが決まり、契約書を結ぶときに通訳をしてくれたオークランド在住の中村敬志さん(44)のアドバイスは、とても印象的だった。
プロ野球選手として毎年、オフには年俸交渉をしてきた。しかし、球団とのやりとりは振り返ってみれば、あえて曖昧にする部分も多かった。お互いの立場を尊重しつつ、言葉に出さなくても理解しあえることがあったからだ。いうなれば、日本的な慣習だったのかもしれない。
海外では暗黙の了解で、相手に“善意の解釈”を求めるのはリスクがある。ニュージーランドで初めて海外生活を送ることになる私に、中村さんはそのことを教えてくれた。