それぞれの方向に進む
こうした保井の“抗文明”“抗合理主義”ともいうべき哲学は、子供のころに培われた。宝石商だった父親の勤務地、ベルギーとイスラエルで10歳ごろまで暮らした。そこで見聞きしたのは、“主張する文化”“無駄を排除する文化”“何でも結論づける文化”“前に前に進む文化”だった。夏休みで父母の実家がある京都や香川に帰るたびに、こうした異国の文化に違和感を感じたという。
そして今は「現代社会の、とくに東京のような都会では何でもスピード、スピード。みんな同じ方向に向かって急いでいる」ことにまた、違和感を持つ。「もう少しじっくり考え、それぞれの方向に進む生き方もあるんじゃないか」。提言を彫刻で表現したいと思う。
展示は、1階、中2階、2階に分かれている。1階には子供や動物の像、中2回には新作「空から」1点だけ、2階には複数の女性像が展示されている。