米ハリウッドを彩るトップ女優の座をいとも簡単に捨て去り、モナコ公妃となったグレース・ケリー(1929~82年)。傍目(はため)には華麗なる転身を遂げたかに見えるケリーの知られざる葛藤をつまびらかにしたのが、映画「グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札」だ。「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」(2007年)でスターダムにのし上がり、伝記映画を得意とするフランスのオリヴィエ・ダアン監督(47)は、オスカー女優、ニコール・キッドマン(47)をケリーに見立て、どんな“偽りの人生”を確かめたかったのだろう。
当事者によって異なる解釈
多くの伝記があり、映画化にあたって資料に困ることはなかったが、一つ残念に思うことがあった。「モナコ公国側は公式に認める伝記とそうでない伝記を厳格に区別して、今なおケリーのイメージをコントロールしようとしていました。だから僕がさまざまな伝記に基づき『モナコ公国に嫁いだケリーはしきたりになじめず、幸せではなかった』とこの映画で『事実』を描いても、モナコ公国側は『事実ではない』と否定するわけです。僕は伝記に書かれた多くの証言を読み、僕なりの解釈を加えて映画化したにすぎません」