柄の悪い架空の街、まほろ市で便利屋を営む多田啓介のもとへ、同級生の行天春彦が転がり込んでから3年目。多田は行天の元妻(本上まなみ)から彼の娘の子守を依頼される。行天は娘の顔すら見たことがない状況なだけに、多田は行天を刺激しかねない面倒な依頼を果たして受けるべきか逡巡(しゅんじゅん)していると…。
行天がなぜ娘に会えないのか? また、なぜ娘と一緒にいることを極端に恐れるのか? 親に虐待されて育った行天の幼少時代に深く踏み込みながら、物語は展開していく。
自分なりの正解
松田は「親から虐待を受けた場合、自分が親になったときに子供に対しても同じことをしてしまうのではないか-。僕はそんな恐怖感やグレーな心模様を見てほしいんです」と強調した。また、作中では親が子供にできる最善のことは何か-を何度も考えさせられる場面があることを踏まえ、「正解は誰も知らない。みんな価値観が違うわけですから、自分なりに正解を見つけていくしかないでしょうね」と、行天に自らの思いを重ねた。