ところが、その治療中、論文の共同執筆者でSARPの研究部門のトップを務めるアンドリュー・ドーン博士は、男性がこめかみの辺りを右手の人さし指で軽くたたく動作を繰り返すことに気づいた。
不思議に思い調べてみると、男性は入所前の2カ月間、試験発売されたグーグルグラスを就寝と入浴時を除き一日最長18時間も着用し続けていたことが分かった。こめかみをたたくのは、グラスを操作する動作だったのだ。
夢も「窓」越し
男性はグラスをかけたまま海軍の任務に従事し、「次第にグラスなしでは仕事に自信が持てないようになった」と告白した。入所後も、意思に反した動作のほか、グラスを使えないことに極度のいらだちを示すなど禁断症状が表れ、記憶障害も確認された。禁断症状は通常のアルコール依存症よりも激しかったという。
男性はドーン博士に「眠った後もグラスの右目の上に付いている小さな灰色の窓越しに夢を見ていた」とも打ち明けた。プログラム終了後、禁断症状は改善したが、グラス越しの“悪夢”は断続的に続いているという。