ロシア・サンクトペテルブルク【拡大】
初秋。夕暮れ時。JR下総中山駅(しもうさなかやまえき、千葉県船橋市)近くで待ち合わせ。定刻きっかり。ボーカリスト、河村留理子さん(32)が姿を現した。
店に入る。飲み物を注文した。
「あの…。わたし。ケーキもいいですか」
どうぞ。どうぞ。取材を始めた。大学入学後、初めてジャズと出合った。米国の女性歌手、サラ・ボーンの歌声をCDで聴いたという。
「声が楽器みたいなんです。音域が広い。高音から低音までピアノのフル鍵盤の音を出せる。自由自在に」
生まれたばかりの幼鳥のように、サラ・ボーン、そしてジャズにひかれた。ニューヨークに渡った。ライブ会場。酒場。街頭。ジャズに浸った。
「やってる本人が楽しそうに演奏しているのが気に入った。その一方で、ジャズは米国の大地に根付いた音楽。『日本人のわたしがちゃんと歌えるだろうか』との不安もあった」
しっかり、向き合おう。ジャズボーカルの伝道師といわれる人物に師事して修業した。そして帰国。