成長率の鈍化で中国経済には「2つの罠(わな)」が待ち受ける。一つは、中南米諸国などと同じく、先進国入りする前に経済成長が伸びなくなる「中所得国の罠」に陥る懸念が一段と現実味を帯びることだ。
さらに、国有企業が中心の体制を保ちながら市場経済化を進める矛盾が、日米欧などの経済システムと摩擦を起こして成長を阻むとの「体制移行の罠」が、リコノミクスが不発の現状で浮き彫りになっている。
2つの罠に陥る前に構造改革をスピードアップして目に見える形で実施し、内需拡大など従来とは異なる成長パターンに直ちに移行しなければ、「2020年までの名目GDP倍増と住民の個人所得の倍増」計画は絵に描いた餅になる。13億人もの巨大市場をどこまで生かせるか。困難な経済運営のかじ取りが続く。(上海 河崎真澄/SANKEI EXPRESS)
■中国のGDP 中国は1970年代後半に経済の改革・開放路線に転換して以降、GDP成長率が高まった。2003年から5年連続で成長率が10%台となり、10年にはGDPが日本を上回って米国に次ぐ世界第2位となった。世界経済での存在感の高まりにより、中国の成長率の変化は0.1%単位で注目されている。(共同)