本当は相模湾の向こうに低く伊豆半島が張りだしているので、夕日は伊豆の山々の向こうに沈むのだが、遙かに薄いもやと逆光線のおかげで、海に沈んでいくように見えるでしょ。こういうときは生半可な知識よりも感動する気持ちが大事である。
「めっちゃ、きれいじゃね?」などと語尾をちょっと上げながら若者がスマホをかざす。傍らの岸壁では、中年カメラマンが三脚を立てて決定的瞬間を待つ。犬を連れて散歩を楽しむ人もいる。
思い思いの砂浜。水平線の雲がオレンジに染まり、上空の青は次第に濃度を増していく。風が少し冷たい。ああ、秋だなあ。なにもないことの価値が、とりわけ貴重に思える時間でもある。(編集委員 宮田一雄/SANKEI EXPRESS)