主人公アリスは、バートンその人だといえるだろう。バートンは幼いころから人になじめず、一人で空想にふけったり、授業中も絵を描いていたりするような“おかしな子”だった。
何かインスピレーションがわくと絵に描きとめるという習慣は、大人になっても続いてきた。展覧会のセクション「アラウンド・ザ・ワールド」には、スケッチブックやホテルのメモ用紙、紙ナプキンに描かれた、おびただしいスケッチやドローイングが展示されている。
撮影中の旅先で見かけた女性を描いても、それは単なる写生ではなく、バートンが対象から感じ取ったイメージや自分の心を反映した「作品」になっている。約50年描いてきたスケッチやデッサンが、映像の確かさや豊かさの土台になっていることを改めて知る。
バートンは、ディズニー兄弟が創設したカリフォルニア芸術大を卒業し、1979年、ディズニー・スタジオにアニメーターとして雇われる。しかしこの5年間は、何一つ採用されない不遇の時代だった。セクション「実現しなかったプロジェクト」では、バートンが「10年分ぐらいの創造的なアイデアを何から何まで出し尽くした」と振り返るドローイングなどが公開されている。