反日感情が強い中国でも、ソチ五輪金メダリスト、羽生結弦(19)の人気は絶大だ。
グランプリシリーズ第3戦の中国杯。上海のリンク上、男子フリー最終組の6選手による演技直前の6分間練習でも、スタンドのファンの多くは羽生の動きを追っていた。
もう一人、熱い視線を集めていたのはSP3位につけていた地元中国のエース、閻涵(えん・かん、18)だった。2人を追う視線が交錯した瞬間、2人は激しく衝突し、リンクに倒れ込んだ。
場内に響いた女性ファンの悲鳴と、その後の静寂。閻涵は立ち上がったが、羽生が動かない。1分余り後にようやく上体を起こした羽生の顎から、血がしたたり落ちた。
関係者が肩を貸して治療に向かうが、演技の続行は不可能とみえた。だが頭に肌色の包帯を巻き、顎にばんそうこうを貼って羽生はリンクに戻った。
バックヤードでは関係者に連れられた顔面蒼白(そうはく)の閻涵と声をかけ合い、グータッチで応えていた。