≪キス&クライ 頬を伝わり落ちた大粒の涙≫
ぎりぎりの状態だったのだろう。フリーの演技後、キス&クライに現れた羽生結弦は足元がふらつき、一人では歩けなかった。座ってスタンドに手は振ったが、顔面には血の気がなかった。両手を合わせてファンに謝罪するようなポーズもとった。
「心配をかけてごめんね」
そう語りかけているようにもみえた。フリーの得点は154.60。SPとの合計237.55はロシアのコフトゥンに及ばず2位。
それでも得点が掲示された瞬間、羽生の表情は大きく崩れ、大粒の涙が頬を伝わり落ちた。大会前から続いた腰痛。思うように滑ることができなかったSP。そしてフリー直前の衝突と流血。演技続行の決断。張り詰めていたものがこの一瞬で瓦解(がかい)したのだろう。
満杯のダムが決壊したような感情の爆発だった。傷ついた顔を両手で覆い、オーサー・コーチと抱き合って泣いた。