そうした中で描いたのが、1976年に連載開始した「イブの息子たち」だ。3人のイギリス美形男子3人組を主人公に、ヤマトタケル、バレエダンサーのニジンスキーなど、歴史上の著名人が次々と登場しドタバタな笑いを繰り広げた。この異色コメディーは、読者に受け、青池は一躍人気作家となった。青池のドタバタ群像劇の才能は、本作で開花したと言ってもよいだろう。
また、同時期に執筆した一連の海洋ロマンものも、青池にとって転機の作だ。最初は、海賊の人質となったお姫様の視点で描かれるなど、少女マンガらしいセオリーを守っていたが、悪役として登場した海軍将校のティリアン・パーシモンを描くうち、青池の意思が固まる。当時の心境を、『七つの海七つの空(豪華版コミックス)』のあとがきにて語っている。
「少女との恋物語など知るものか。かつてないほど、私は悪役に惚(ほ)れたのだ。(略)この時私の漫画の描き方が変わった。それまで、清く正しいヒーローやヒロインが活躍する、いわゆる正統的な少女漫画を欺瞞(ぎまん)的に感じてはいても、長い間そのパターンに沿って描いてきた私にとって、悪役を主人公に置き据えた事は、大げさにいえば意識革命、早い話が本音で漫画を描き始めたのだ」