モノづくりの原点
こうした中で今回ご紹介するのは、キッチンを中心とした上質な生活を提案するトーヨーキッチンスタイルが、創立80周年を記念して作り出した“包丁”である。丸若屋が企画段階から関わらせていただいたものだが、その過程においてトーヨーキッチンスタイルのモノづくりへの強い思いに、心から共感することができた。ステンレスの食器メーカーとしてスタートした彼らの歩みは、キッチンという概念が日本に生まれ定着するまでの時間軸とほぼ一致する。その彼らが今も国内生産拠点としているのが創業地である岐阜県の関市だ。刃物の生産地として全国的にも有名であるこの土地で、創業初期に手掛けていた包丁作りを改めてこの節目の年に行う事から、彼らのモノづくりへの原点に立ち戻ろうとする強い思いを感じる。
制約が生む未来
道具として求められる機能が非常に明確である“包丁”は、その製造方法においても多くの制約が存在する。しかし今回の包丁製作においては、機能はもちろん、材質や形状に至るまで、細かく吟味され分解されることで、固定概念に捕らわれることのないものづくりが追究された。結果的に、個性的でありながら洗練されたたたずまいと、耐久性に優れた高い切れ味を兼ねそろえた品が誕生した。