シリアとイラクの一部地域を占拠するイスラム教過激組織「イスラム国」とみられるグループが、身代金2億ドルを支払わなければ72時間以内に殺害すると脅迫してきた。テロリストの卑劣な行為に強い憤りを覚える。マスメディアでは、「日本政府は身代金を払うべきか否か」という議論がなされているが、これは疑似問題だ。疑似問題とは、仮定や前提が間違っているので、答えがそもそも存在しない問題のことだ。
中東歴訪は原因ではない
「ウサギの角の先は鋭っているか、それとも丸いか」という問題について考えてみよう。ウサギには角がないので、こういう疑似問題について議論しても答えがでないし、そもそも意味がない。
常識に照らして考えてみよう。身代金を銀行送金することはできない。通常は、現金か金塊で支払う。百貨店で用いられている紙袋に100ドル札を詰め込むと50万ドルくらい入る。2億ドルならば400袋必要だ。ドル札も使用後の追跡が可能な連番の新札ではなく、使用済みの札が必要になる。1、2日でこれだけの札を集めることは至難の業だ。金塊ならば4トン以上必要になる。これだけの札束や金塊をひそかに運搬し、引き渡すことは不可能だ。