日本人2人を拘束したイスラム国が身代金要求の口実とした中東訪問を控えた1月上旬の官邸。首相は外務省の上村司中東アフリカ局長と複数回にわたり、現地での各国首脳会談や演説内容について打ち合わせた。主な議題は中東支援策の中身だったとされる。
この時点で官邸は、後藤さんが拘束されたとする外務省の報告を受けていた。後藤さんの行動に関し「どんなに使命感が高くても、真の勇気ではなく蛮勇と言わざるを得ない」(自民党の高村(こうむら)正彦副総裁)と受け止める空気が政府内に漂っていたのは間違いない。
1月20日。政府内のムードが一変する。ナイフを手にした覆面男が後藤さんと湯川さんの2人をひざまずかせたビデオ映像。エジプトを訪問中の17日に首相がイスラム国対策として表明した支援と同額の2億ドルの身代金支払いを迫った。
応答得られず
日本側はヨルダンやトルコ、宗教指導者、部族長などあらゆるルートを通じ、日本人解放を模索した。後藤さんの妻から得た犯人側のメールアドレスを使い接触も試みたが、「全く応答はなかった」(関係者)。犯人側は一切、日本との直接交渉に応じなかった。