場面ごとに衣装替え
本作は病をど真ん中に据えた重量級の物語なのに、最後には見る者の心を軽やかにしてくれるから不思議だ。「脚本を読みながら登場人物の一人一人に感じたのは、人は他の人とつながることで悩みから解放され、人間らしさに深みを加えることができるというものでした」。本作はサスペンスの体裁を取りつつも、むしろ登場人物の内面が充実していくことに重きを置いた成長物語だからというのが関の解釈だ。
マリコは一見、誰と相対してもフラットな自分でいられる極めて冷静沈着な人物だが、まるで感情がないわけではない。コーヒーカップを客の雰囲気に合わせて選ぶ細やかな心遣いのできる女性でもある。関はスタッフと相談し、感情の抑揚を衣装の微妙な色の違いで表現してみせた。「場面ごとに衣装を替えています。選んだ色は決して暗いものではなく、深い色でした。ラストに向かって衣装を考えながら演技に取り組むのも楽しみの一つでした」
映画デビュー10周年を迎え、本作は関の仕事観にも大きな影響を及ぼした。「自分が好んで選ぶ仕事は偏ったものになることもあるでしょう。他の人が選んでくれた仕事を積極的に取り入れていきたいですね。きっと私に似合うと思って選んでくれた仕事だからです」