中国の対外純資産は14年9月末時で1.8兆ドルの対外純債権を持ち、日本に次ぐが、外準を除くと、負債は資産を2.4兆ドルも上回る。外準も資産には違いないが、融資や証券のような他の金融資産と同列に扱うことはできない。実質的な中身からすれば、中国は「債権大国」どころか、債務大国なのである。
ロンドンなど国際金融市場にとってみれば、資本逃避に悩む中国は国際金融界にとって唯一の融資先になっている。国際決済銀行(BIS、本部スイス・バーゼル)によると、中国の海外の銀行からの借り入れ残高は14年9月末、1兆700億ドルで、前年比2800億ドル増えた。
世界全体での国際銀行融資2700億ドル増をしのぐ。英国の参加はロンドンが取り仕切る国際金融界が中国の野心の後を押し、その上がりで儲けようという強欲主義そのものだ。
それは戦前、ナチスにカネを流した国際金融界の姿とダブる。英国はお得意さん中国のAIIB参加要請に応えたのだろうが、リスクに応じて高い金利を要求する国際金融界を代弁することだろう。
日本の金融界は国際金融市場への最大の資金の出し手である。日経など国内の中国に大甘の見方には与せずに、冷静にチャイナリスクを見極めて欲しいところだ。(産経新聞特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)