「敵の敵は味方」
日本では、過激派組織「イスラム国」(IS)に関する報道と比較して、イエメン情勢についてのマスメディアの関心が低い。どうもイエメン紛争の戦略的意義が過小評価されているようだ。
現在、イエメン紛争が、イエメン国内のアルカイダ系組織とフーシ派の対立という構図から、サウジとイランの代理戦争に転化しつつある。「敵の敵は味方」という理屈で、サウジは事実上、アルカイダ系組織を支援している。しかし、アルカイダ系組織は、サウジに対する恩義はまったく感じていない。イエメンにおける支配領域を確立して、イスラム世界革命を志向していくであろう。アラビア半島にISだけでなく、アルカイダ系の拠点国家が形成されつつある。
今回の混乱の引き金を引いたのはイランだ。イランは、革命防衛隊をイエメンに派遣しても、米国は軍事介入できず、事態はイランに有利に推移すると誤認していた。サウジが軍事介入してくる可能性について考えていなかったのであろう。イランが国際情勢の撹乱(かくらん)要因であることがイエメン危機でも可視化された。(作家、元外務省主任分析官 佐藤優