8月。ようやくフィリピンに到着した。台風の季節。「危ない。沈没するかもしれない」。関野隊長は苦渋の決断を下す。航海中断。乗組員は落胆した。一時帰国。翌年、航海を再開した。遅々として進まない。再び中断して帰国したとき、東日本大震災が発生した。冒険どころではない。医師でもある関野さんは東北の被災地に駆けつけ、医療支援を続けた。
さあ、3度目の挑戦だ。縄文号は危険な海峡を渡った。台湾へ。さらに航海を続ける。石垣島が見える。男たちは船を漕ぐ。漕ぐ。漕ぐ。3年間の苦難の果て。ゴール到着。だが、歓喜の爆発はなかった。男たちは放心したかのような表情を浮かべた。
上映が終了した。暗闇。拍手が鳴り響いた。みな感動したのだ。関野さんが会場に現れた。語った。
「太古の人たちがどんな思いで旅をしたのか。確かめてみたかった。困難が大きいほど、達成感は大きい」
水本監督はいった。「世に残る映画に」。わたしは関野さんに握手を求めた。力強かった。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)
■逍遥 気ままにあちこち歩き回ること。