ネタニヤフ首相が、パレスチナ国家の存在を認めない「ユダヤの家」との連立を余儀なくされた背景には、イスラエル・米国関係の悪化がある。米国のオバマ政権は、過激派「イスラム国」(ISIL)との戦いを最重要課題にしている。スンニ派のISILには宗派的傾向が強く、シーア派(特にイランの国教である12イマーム派)の殲滅(せんめつ)を当面の課題としている。従って、イランにとって、ISILを解体することが至上課題になっている。オバマ政権は、「敵の敵は味方」という論理で、イランを味方につけようとしている。そこで、米国は従来のイランに対する強硬策を緩めることにした。
奇妙な核開発文書
4月2日、スイスのローザンヌで、米英仏露中独とイランの間で、イランの核開発の枠組みに関する合意が達成された。もっとも合意文書が作成されたといっても、誰も署名していない、奇妙な文書だ。7月に本合意がなされる予定であるが、先行きは不透明だ。4月2日の枠組み合意について、イスラエルは、米国が2年間の猶予でイランの核開発を容認したものと受け止めた。イスラエルは、イランが現在も「イスラエルを地図上から抹消する」(アフマデネジャード元イラン大統領)という方針を堅持しているとみている。